会場はロンドンの東側にあるイベントスペース“Tobacco Dock/タバコ・ドック”。テムズ川から引き込まれた用水路のそばに建つ、19世紀に建てられたタバコ用倉庫をリノベーションした会場は雰囲気もいい。
イギリスの新しいバイク系情報発信源
それが「The Bike Shed London」
トライアンフが生まれたイギリスでは、いま再びバイクブームが訪れている。その要因となっているのが、トライアンフが発表した新型ボンネビルに代表される、各メーカーがこぞってラインナップする“ネオクラシックモデル”と、カスタムシーンの盛り上がりだ。バイクらしいシンプルなスタイルを持ちながら、最新のコンポーネントを持つ“ネオクラシックモデル”は、さまざまな生活スタイルを持つライダーたちにフィットしやすく、それでいてバイクが本来持つ、操る楽しさや機能美に溢れている。またシンプルが故に、ライダー個人の趣味を反映しやすく、それがカスタム熱を後押ししている。英国の都市部は、日本と同じく、駐輪場問題を抱え、また冬は寒くバイクに乗る環境は日本以上に厳しい。それでありながらバイクブームが起こっているという事実は、イギリスにおけるバイクの魅力が、あらゆる面で見直されているという証だろう。
ここで紹介する「The Bike Shed London/ザ・バイクシェッド・ロンドン」は、そのバイク人気を象徴するカスタムバイクイベントだ。今年で開催8回目を迎えるこのカスタムイベントは、主催者が出展車両すべてを吟味した招待エントリー制。一般エントリーも受け付けているが、それらもすべて事前に書類選考されている。それによって個性的でバラエティに富んだベース車両、カスタムにおける高い技術とデザイン力が保たれ、世界中が注目するカスタムイベントへと成長したのだ。
ユニークなのは、主催者である「The Bike Shed」だ。そもそもカスタムバイクを紹介するポータルサイトとしてスタート。現在ヨーロッパを中心に盛り上がり、その勢いが北米や日本、アジアへと広がりつつある、国産車や欧州車をベースとした“ニューウェーブ系カスタムシーン”の基礎を作り上げた。その後、ネット上で盛り上がるカスタムシーンの熱をリアルに感じられる場所を提供するためにリアルイベントの「The Bike Shed London」を開催。さらに2015年にはイーストロンドン地区/ショーディッチに、レストランとバイク系アイテムのセレクトショップを併設した「The Bike Shed」もオープンさせた。2015年に新型ボンネビルの発表に合わせて、世界中のジャーナリストを集めた国際発表会が行われたのも、このレストラン「The Bike Shed」だ。
いまやエースカフェに継ぐイギリス・バイクカルチャーの発信地となり、年に一度のカスタムイベント「The Bike Shed London」とともにヨーロッパ・バイクシーンを牽引する存在となっている。
フォトTOPICS(写真点数/19枚)
01Death Machine of London(デスマシン・オブ・ロンドン)が製作した、2007年型トライアンフ・スラクストン900をベースにしたカスタムマシン。ボードトラックレーサー的なハンドル、アルミ製のビキニカウル&タンク&シートカウル、木製シートとユニークながらクラシカルなテイストのディテールが特徴。シートカウルエンドまで引き上げられたセンターアップのサイレンサーは、テールライトの中央に排気口をデザインする。
02ロンドンに拠点を置くカスタムファクトリー/deBolex Engineering(デボレックス・エンジニアリング)は2015年型トライアンフ・スラクストンRをベースにカスタム。外装類はすべてアルミからワンオフ製作され、市販モデルに見えるよう、各部に徹底的に手を入れ、カラーリングなどもあえてシックにまとめ上げている。
03ホンダCX500ベースのカフェレーサーを製作し、ニューウェーブ・カスタムシーンにおいて一躍時の人となったカスタムファクトリー/Blacktrack Motors(ブラックトラック・モータース)。その最新作が“Thruxman(スラクスマン)”だ。ベースとなったのはトライアンフ・スラクストン。レーシングマシンの、そしてセパレートハンドルを持つ“カフェスタイル”のアイコンであるノートン・マンクスをモチーフに、現代的なカフェレーサーを製作した。外装類はもちろん、張り出したエキゾーストパイプもワンオフ製作されている。
04昨年からスタートしたカスタムバイクによる0-200mドラッグレースのヨーロッパ選手権/Sultans of Sprint(ソルタンス・オブ・スプリント)に参加しているマシン。製作はフランスのFCR Original(FCRオリジナル)。4バルブの2気筒トライアンフにニトロをセット。フレーム周りもオリジナルで製作している。
052016年型トライアンフ・スクランブラーをベースに、よりダート色を強めたこのマシンを製作したのもFCR Original(FCRオリジナル)。フレームやスイングアームはノーマルながらニッケルメッキを施し、ペグやハンドルといった操作系にくわえ、前後フェンダーもオフロードスタイルに変更。リアショックはARショック・ファクトリー製。エキゾーストパイプはオリジナルで製作。
06 こちらもFCR Original(FCRオリジナル)が製作したマシン。水冷エンジンを搭載した2017年型トライアンフ・ストリートツインをベースにエキゾーストパイプや前後フェンダー、サイドカバーを製作。よりクラシカルなテイストを強めている。
07現在人気急上昇中の英国製ヘルメットブランド/HEDON(ヘドン)が造り上げたカフェ。2017年型のトライアンフ・スラクストンRがベースとなる。
08英国のカスタムファクトリー/STRIK(ストライク)が製作したのは1975年型のトライアンフ・T160。外装類はすべてアルミ製のワンオフ。美しいボディラインが特徴だ。
09フランスのOrtolani Customs(オルトラーニ・カスタム)は1956年型トライアンフT100をハードテイル仕様にカスタム。Ortolaniは旧車に限らず、最新のスーパースポーツのカスタムも手がける。
10ロンドンを拠点に活躍するバイク系ファッションブランド/VC London。トップファッションブランドのデザイナーとして活躍する、熱狂的なバイクファンの女性たちが自分たちのために造り上げたブランド。女性向けのバイカーイベントも多数開催している。中心人物であるジェンマ(右)とナミン(左)。トライアンフのチョッパーはジェンマの愛車。
11来場者を隠し撮り。決して多くはなかったが、こんなロッカーズスタイルの来場者も。
12Twisted Spine Custom Motorcycle(ツイステッドスピン・カスタムモーターサイクル)が製作したBSAナビゲーターがベースのカスタムマシン。
13Rocket Bobs(ロケット・ボブズ)が作り上げたのは1935年型トライアンフL2-1がベース。毎年1月、イタリア・ベローナで開催されるカスタムショー/Motor Bike Expo(MBE/モーターバイク・エキスポ)でタイトルを獲得した車両。
14Thornton Hundred Motorcycles(ソーントン・ハンドレッド・モーターサイクル)は、1986年型のホンダCR500をトラッカースタイルにカスタム。
15チョッパーなどを得意とするPaul Milbourn Custom(ポール・ミルボーン・カスタム)はモトグッツィV11をベースにしながら、軽量なカフェスタイルのマシンを目指しチタンフレームを製作。車重155kgを実現。
16ヤマハヨーロッパが推し進めるカスタムプロジェクト/Yard Built(ヤード・ビルド)から派生した新プロジェクトは、オランダの時計ブランド/TW STEELとコラボした“Son of Time(サン・オブ・タイム/息子の時間)”。次世代のスタンダードを目指すこの企画では、さまざまなビルダーがヤマハの最新バイクをカスタム。これはXSR900をベースに、ドイツ・ミュンヘンをベースとするカスタムファクトリー/Diamond Atelier(ダイヤモンド・アトリエ)がカスタム。
17スイスの若きカスタムファクトリー/Young Guns Speed Shop(ヤングガンズ・スピードショップ)が製作。インディアン・スカウトをベースにNosインジェクションをセットアップしたバカッ速の0-200mドラッグレース・マシン。
18「The Bike Shed London」は毎年5月に開催される。初夏を思わせる日差しながら、カラッとしていてじつに気持ちが良い。
19約2.5日間開催で入場者数は約1万5000人。毎年、イベントスペースが広がり、展示車両数や来場者数が伸びているという。