競馬場のショートトラックを使ったダートトラックレース「El Rollo/エル・ロロ」のビンテージクラスでトップ争いをしていた2台のトライアンフ。酷似したルックス&ディテールの2人&2台だが、両車は異なっている。
開催直前の嵐によって
急遽メイン会場を移転し開催
今年の「Wheels and Waves/ホイールス・アンド・ウェーブス(以下WW)」は、波乱のスタートとなった。今年で7回目の開催となるこのイベントは、毎年6月上旬から中旬にかけ、南フランスの街/ビアリッツを中心に、フランスとスペインに跨がるバスク地域でさまざまなコンテンツが行われた。カスタムバイクを中心にサーフカルチャーをミックスし、近年はファッションブランドとのコラボレーションが積極的に行われ、またスケートや音楽といった多様なカルチャーがミックスされ、バイクイベントの新しいカタチを指し示すことで、欧州バイクカルチャーの中心的存在へと成長した。
しかし今年は、スポンサー企業や出展者の搬入が始まる、イベント開催日の2日前に嵐が到来。準備を進めていた屋外メイン会場のテントやブースが壊れてしまったのだ。ここ100年の気象史では経験したことが無い6月の嵐に開催が危ぶまれる状況となったが、主催者とビアリッツの自治体および警察は協議の結果、メイン会場を空港近くの屋内イベントスペースへと移して開催することを、その日の夕方に決定。それから夜を徹して移転作業を行い、奇跡的にスケジュール通りにイベントをスタートさせたのである。
メイン会場とは別の場所で開催される公道ドラッグレースやアートイベント、ダートトラックレースに初開催のエンデューロレース、そしてサーフコンテストは、路面や波のコンディションが安定しなかったものの晴天の中で開催。急仕立てのメイン会場も多くの観客で賑わい、いつもとは違ったWWを楽しむことができた。
急遽移転したメイン会場「Village/ビレッジ」に出展していたフランスのカスタムビルダー&ライディングファッションブランド「Pure Motorcycle&Accessories」。そこにはワーゲンのピックアップに油冷のトライアンフ・ボンネビルのカスタムバイクをセット。その車両は、外装類はもちろん、前後足周りや吸排気系にいたるまで、徹底的に手が加えられていた。
メイン会場からバイクで40分ほどの場所にある、スペイン・オンダリビアの農道を封鎖して行うドラッグレース「Punks Peak/パンクス・ピーク」のスタートシーン。排気量や年代によって、さまざまなクラスが用意されている。
スプリントレース(彼らはドラッグレースをこう呼ぶ)用にカスタム&チューニングが施されたビンテージ・トライアンフ。
ビアリッツから近いトゥールーズの街で「EAST SIDE」という、バイク/BMW/サーフ系のセレクトショップを営むクリストフ。かつてBMWやダートトラックのレースに参戦していたと言うだけに、そのライディングスキルはかなりのもの。このダートラ仕様のトライアンフで「Punks Peak」と、ダートトラックレース「El Rollo」を走った。
「Punks Peak」の後、麓の街/オンダリビアで開催されたアフターパーティ会場に停まっていた水冷のボンネビルT120。ライト周り、排気系、リアサス、シート&リアフェンダー周りとライトなカスタムだが、スタイリッシュにまとまっている。
Matisse Triumphに乗って、タイムトライアル形式のビンテージ・エンデューロレース「SWANK RALLY/スワンクラリー」会場に来場したのは、英国人デザイナー/ニック・アシュレイの愛娘、エディ・アシュレイ。彼女はこの車両で、果敢にタイムアタックにチャレンジ。出走前は父親のニックがヘルメットチェック。
日本のブランド/Addict Clothes(アディクト・クローズ)が2年連続ブースを出展。そのハイクオリティなレザージャケットやブーツは欧州でも人気が高まっている。
英国のファッション誌/Men’s File(メンズ・ファイル)と合併号を出すなど、欧州のバイク&ファッションシーンでも人気の雑誌/CLUTCH Magazine(クラッチ・マガジン)もブースを出展。
本ページの冒頭に紹介した、フラットトラックレース「El Rollo」に参戦したライダーとマシン。このライダーはフランス人写真家であり、英国のダートトラック選手権フーリガンクラスにインディアン・スカウトで参戦するほか、ビンテージMX&ビンテージダートトラックレースなどを戦うディミトリ・コステ。マシンは、トラックマスターフレームにT120ボンネビルエンジンを搭載したダートトラック・スペシャルマシン。
プレ1975の500cc以上クラスでディミトリとトップ争いを演じ、最終的に3位でフィニッシュしたのは、アップルやNIKEなどのCM映像製作を手掛けるグレヴド・ティボー。彼が駆ったのは、スタンダードフレームをベースとしたボンネビルT120ベースのフラットトラッカー。
ヒンクレートライアンフと呼ばれる、1990年代に登場したトライデント。750か900か、その詳細は不明だが、その3気筒マシンをベースにフラットトラッカーに仕上げられている。欧州では90年代のヒンクレートライアンフをカスタムする例も少なくない。
ELECTRICのブースに展示されていたビンテージ・トライアンフ。サーフやスノーを中心としたアパレルやアクセサリーを展開するELECTRIC(エレクトリック)もWWを支える常連スポンサーブランドだ。
ビンテージバイクやビンテージウエアの熱狂的なコレクターとしても知られるBonzoro
「Punks Peak」は2つのコーナーを持つ約400mのスプリントレース。コース脇は木製のガードレールで仕切られている。
「El Rollo」に参加したBSAのフラットトラッカー。ライダーは欧州のビンテージ・レースに参戦するオリビエ。
ロイヤル・エンフィールドのブースには、昨年のEICMAで発表されたツインエンジンを搭載した「コンチネンタルGT」と「インターセプター」をベースにしたカスタムマシンが展示されていた。このマシンはロイヤル・エンフィールド社自身がカスタム&チューニングしたマシン。フレームはハリス製のドラッグレーススペシャル。S&S製のボアアップキットで865ccに排気量を拡大するほか、S&S製のインジェクターやスロットルボディ、コンロッドやカムなどによって、大排気量化に対応している。
コンチネンタルGTをベースに、クラシカルなカフェスタイルを造り上げたのはスイスのカスタムビルダー/ヤングガンズ・スピードショップ。ロケットカウルや一体型のタンクカバー&シートはオリジナルデザイン&製作のFRP製だ。
インターセプターをベースにカスタムを施したのは英国のカスタムビルダー/オールド・エンパイヤ・モーターサイクルズ。外装類はアルミ製のワンオフ。ハンドル回りにレバー類はなく、クラッチは右グリップ、フットペダルで前後連動ブレーキを操作する。