マシンも装備もすべてレンタルで参加できるトライアンフ初の本格的アドベンチャー体験施設がオープン!
- 掲載日/2018年11月21日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン、TRIUMPH ADVENTURE EXPERIENCE
取材・写真・文/佐川 健太郎
採石場を利用した広大なアドベンチャーコース
英国・トライアンフ本社が新たに開設したアドベンチャー・トレーニング施設を体験取材してきたのでレポートしたい。ウェールズ第二の都市、スウォンジー郊外に今春オープンした「TRIUMPH ADVENTURE EXPERIENCE(トライアンフ・アドベンチャー・エクスペリエンス)」はアドベンチャーモデルを安全に乗りこなすためのトレーニング施設である。レクチャールームやロッカー、軽食スペースを完備したセンター施設から20kmほど離れた山の中に広大なトレーニングコースがある。
元々採石場だった場所を利用してフラットダートやロックセクション、ヒルクライム、森林を抜けるウッズなど様々なセクションが用意されている。半日程度の体験だったのでとてもコース全体を回ることはできなかったが、自然を利用したかなり本格的なコースという印象だ。対象は一般ライダー向けで、トライアンフユーザーでなくても参加できる開かれた場所だ。
車両と装備はすべてレンタル可能
教室やロッカールームを完備したセンターハウス。
今回は日本からディーラー関係者と共に参加したが、皆さん一様に驚いていたのが施設の規模と充実度。トレーニング車両はすべてレンタルで、車種はタイガー800XCと1200XC、そしてストリートスクランブラーの3モデルを用意。もちろんガード類も完全装備され、タイヤもオフロード走行用のブロックタイヤに換装されるなど本気仕様だ。
ストリートスクランブラーも多数用意。
全車ブロックタイヤを装備しているので本格的なオフロードでも安心して走行できる。
装具についても、ヘルメットからウエア上下、グローブにブーツ、ボディプロテクターまでライディングに必要な全ての用品をレンタル可能で、身ひとつで参加できるという気軽さが素晴らしい。実際、ツーリングや旅行ついでに海外から参加するライダーも多いようだ。
センターハウスには軽食を食べられたり、用品展示コーナーもある。新しくてお洒落な雰囲気が気持ちいい。
ベテラン講師陣がレベル別にアドバイス
トレーニングでは最初に教室でコース説明やマシン操作について簡単なレクチャーを受けた後、ロッカーで着替えたら好きなモデルを選んで出発となる。ちなみにオフロード初心者にはストリートスクランブラーがおすすめで、足着きに不安がある人にはタイガー800XCローシートも用意されている。
教室のレクチャーでコースを紹介されたが、広すぎて覚えられない(笑)。
ロッカールームで専用ウエアに着替える。ヘルメットからブーツまで全身レンタル可能。もちろん自前の持ち込みもできる。
インストラクターも実力者揃いでダカールラリーなどの国際ラリーや世界エンデューロ選手権のファイナリストレベルとのこと。カリキュラムは初心向けの入門コースから、その上のレベル1~3までのコースが用意され、経験やスキルによって段階的にレベルアップできるシステムになっている。久しぶりにバイクに乗るというリターンライダー用のカリキュラムなどもあり、その辺りの事情は日本とも似ているようだ。
経験豊富なインストラクター陣。総勢8名いるそうだ。向かって左は女性イントラで国際ラリー経験者。
電子デバイスを駆使した実践テクが学べる
さて、いよいよトレーニング開始。コース入口から最初のセクションに移動するまでがすでにけっこう難関で、上り坂で特に雨でぬかるんでいたためワダチに前輪がとられるし後輪も滑る。そこで力を発揮するのがライディングモードだ。自分はタイガー800XCを選んだのだが、イントラから事前に指示があったとおりオフロードモードに切り替えると、後輪はトラクションコントロールが絶妙に介入して滑りを抑えながらマシンを前に進めてくれる。
オフロードモードを使ったブレーキトレーニング。基本からきっちりアドバイスしてくれる。
ブレーキングでもオフロードモードだと前輪のみABSが作動して最適な効き加減できっちり止めてくれる。逆にリアブレーキを下手に使うと後輪が流れるので使わなくてもいいそうだ。オフ走行ではリアブレーキを積極的に使っていくイメージがあったので意外だったが、実際にイントラのアドバイスどおりにすると、しっかり安定してバイクの挙動をコントロールできるため、滑りやすい路面でも気持ちにも余裕が生まれ安心してライディングを楽しめる。テクニックだけでなく、最新の電子デバイスの活用方法も含めて教えてくれるわけだ。ライダーのレベルによって当然教えるテクニックも変えているようだが、ビギナー向けの講習としては実に理にかなっていると思えた。
スタンディングなどオフロード走行でのライディングフォームを最初にレクチャー。
これ以外にも、路面が不安定なオフロードでの乗降車やスタンディングフォームの正しいやり方、ステップワークを使って車体の向きを変える方法など、具体的で実践的なテクニックを丁寧に教えてくれる。最初にイントラがデモ走行を行い、続いて参加者が同じようにリピートする方法なのでとても分かりやすかったし、英会話にあまり自信がなくてもジェスチャーで大方理解できると思う。
ステップワークを使いながらパイロンスラロームを実践。
充実度満点のアドベンチャーツーリングで締めくくり
採石場跡ということもあり大きな岩が点在しているワイルドな場所もある。
仕上げは森の中を走り抜けていく広大な林道コースで、その日に学んだテクニックを駆使してオフロードを走破。ほとんどはフラットダートだが途中には深いワダチや大きな岩が埋まったガレ場などもあり、入門コースという割にはかなりハードな内容。日本の感覚では中級レベルかと思われるが、さすがはディーラーの皆さん、全員無事走破していた。これも経験豊富なイントラの的を射たアドバイスとトレーニングのおかげ、と有難みを実感。短い時間だったが、ウェールズの大自然の中で本格的なアドベンチャー・ライディングを楽しめた。この爽快感と充実度は何にも代えられないまさに特別な体験となるはずだ。
森の中を延々と走破していく林道コース。写真はフラットだがガレ場などの難所も含まれている。
林道コース途中の休憩エリアでブレイク中。熱いコーヒーが冷えた体に染みわたる。
コース内には渡河も含む多彩なセクションが設定されアドベンチャー度満点だ。
参加者はお土産のTシャツと終了証をもらえる。素直に嬉しい。
ちなみに参加申込は本国サイトからで、料金は入門コースで299ポンド、レベル1~3の2日間コースで499ポンドと安くはないが、これだけの設備と講師陣、カリキュラムの充実度を考えればリーズナブルと言っていいだろう。興味のある方は本国ホームーページにてチェックしてみてほしい。
タイガーシリーズの性能をフルに引き出すカリキュラムも用意。
低速トルクが厚く足着きの良いストリートスクランブラーはオフロードでも扱いやすい。